
Title: Chocolate intake is associated with better cognitive function: The Maine-Syracuse Longitudinal Study.
邦題: チョコレート摂取量は認知機能の高さに関係している
Journal: Appetite. 2016; 100: 126-132.
Authors: Crichton GE, et al.
Reviewer: Maki AOYAMA
目的: 米国の成人のデータを利用し,習慣的なチョコレート摂取頻度と認知機能の関係を分析することを
目的とした.
内容: チョコレートを頻繁に食べている人ほど,認知機能が高い傾向にあることがオーストラリア
South Australia大学のGeorgina E. Crichtonらの研究で明らかになった.チョコレートは,カテキン,エピカテキンなどのフラバノール(ココアフラバノールまたはカカオフラバノール)を豊富に含んでおり,健康にさまざまな利益をもたらすと考えられている.特に,循環器に対する好ましい影響を示すデータが蓄積されつつある.しかし,認知機能との関係を調べた研究においては,今まで一貫した結果は得られていなかった.
Crichtonらは,フラバノールを摂取してから90~120分後以降に認知機能が向上する可能性を示した先行研究を基に,2001~2006年にわたったMSLSと名付けられた研究に参加した,23歳から98歳までの968人を対象に,習慣的なチョコレート摂取と認知機能の関係を調べた.MSLSとは,循環器疾患のリスク因子と認知機能の関係を調査するために1975年に始まった研究である.
MSLSでは,食物摂取頻度調査のなかでチョコレートの摂取頻度を尋ねてはいたが,ミルクチョコレート,ダークチョコレート,ホワイトチョコレートといった,チョコレート種類別の調査は実施していなかった.
968人中337人(34.8%)は「チョコレートを全く食べない/まれにしか食べない」と回答,631人(65.2%)は「1週間に1回以上食べる」と回答した.そのうち265人(27.4%)は1週間に1回,366人(37.8%)は1週間に2回以上チョコレートを食べていた.
結論: これら対象者ついて,広範な認知機能検査の結果を調べた.認知機能検査には MMSEも含まれていた.認知機能検査のスコアについて,チョコレート摂取頻度との関係を調べたところ,チョコレートの摂取頻度が高いほど認知機能のスコアも高い傾向があることが示された.年齢と性別を考慮して分析すると,「視空間記憶と視空間構成,言語記憶,作業記憶,探索と追跡,抽象的思考の能力」の総合スコアと,言語記憶を除く全ての指標のスコア,MMSEのスコアに統計学的に意義のある改善が見られた.結果に影響する可能性がある幅広い要因(心筋梗塞や脳卒中などのリスク因子や飲酒量なども含む)を考慮して解析しても,総合スコア,視空間記憶と視空間構成,探索と追跡,抽象的思考,MMSEのスコアは,チョコレート摂取頻度に応じて向上していた.
著者らは,「今後,より長期的な研究や介入研究を実施し,チョコレートやカカオフラバノールの摂取が認知機能の改善を引き起こす仕組みを明らかにする必要がある.」と述べている.