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Title:   Watching television and risk of mortality from pulmonary embolism among Japanese men and women

邦題: 日本人男女間のテレビ視聴時間と肺塞栓症死亡リスク

Journal:  Circulation. 2016;134:355-357

Authors:  Shirakawa T, Iso H, Yamagishi K, Yatsuya H, Tanabe N, Ikehara S, Ukawa S, Tamakoshi A.

Reviewer: Maki AOYAMA

目的: テレビ視聴時間が1日2.5時間未満の人と比較したリスクを検討した.

内容:  エコノミークラス症候群は,肺塞栓症(Pulmonary Embolism:PE)と深部静脈血栓症(Deep Vein Thrombosis:DVT)を合わせた概念で,換言すれば,長時間座ったままの姿勢を続けている間に脚の血流が悪くなり,静脈の中に血栓(血の塊)が形成され(=深部静脈血栓症),立ち上がって歩き出したことをきっかけとして血栓が血流に乗って運ばれ,肺動脈を塞ぐ(=肺塞栓症)病気である.

大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座(公衆衛生学)の白川透先生らは,テレビの前に長時間座っていると,肺塞栓症によって死亡するリスクが高まることを世界で初めて明らかにした.

対象者はJapanese Collaborative Cohort Study(JACC)という研究に参加した,日本国内45地域の住民.JACCは,日本人の生活習慣がガンとどのように関連しているかを調べる目的で,1988年~1990年までの間に40~79歳の男女11万585人を登録し,追跡調査した.

         この論文はその登録者の中から,登録時に1日当たりのテレビ視聴時間の平均を尋ねる質問に回答し,ガン,脳卒中,心筋梗塞,肺塞栓症を経験したことがない86,024人(男性36,006人,女性50,018人)を分析したものである.1日のテレビ視聴時間の平均に基づき,これらの人々を1日のテレビ視聴時間の平均が2.5時間未満,2.5~4.9時間,5.0時間以の3群に分けて解析した.

         肺塞栓症で死亡したかどうかを,2009年末まで,19.2年(中央値)追跡したところ,59人が肺塞栓症を発症して死亡していた.その内訳は,テレビ視聴時間2.5時間未満の群で19人,2.5~4.9時間で27人,5.0時間以上で13人だった.

結論:   参加者の年齢,性別,生活習慣,健康状態を考慮して分析しても,テレビ視聴時間が長いことが,肺塞栓症による死亡のリスクの上昇に関係していた.視聴時間が1日2.5時間未満の人々と比較して,2.5~4.9時間の人々の肺塞栓症による死亡のリスクは1.7倍,5時間以上の人々では2.5倍になった.また,テレビ視聴時間が2時間延長するごとに肺塞栓症による死亡リスクは1.4倍になっていた.

        長時間の視聴であっても,コマーシャルや番組宣伝の時間に立ち上がって体を動かせば肺塞栓症は発生しにくくなる.今回の結果は,仕事や趣味のためにパソコンの前で長時間座っている人にも同様のリスク上昇が起こる可能性を示唆している.適度な休憩を挟んで仕事や作業を続けることが大切だといえる.

 

URL : http://circ.ahajournals.org/content/134/4/355.abstract

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