Title: Increased risk of falling in older community-dwelling women with mild cognitive impairment.
邦題: 軽度認知障害を有した地域在住高齢女性の転倒リスクは増加する
Journal: Phys Ther. 2008 Dec;88(12):1482-91.
Authors: Liu-Ambrose TY, Ashe MC, Graf P, Beattie BL, Khan KM.
Reviewer: Yasunobu ISHIKAWA
Abstract
背景:
転倒は高齢者の健康管理において主要な問題であり、それらは認知障害と関連している。また、軽度認知障害(MCI)は臨床の問題として注目されている。身体機能および認知機能領域の両方の転倒リスクの要因に対して、MCIを有したものとそうでないものを総合的に比較した研究はみられない。
目的:
今回の横断研究の目的はMCIを有した地域在住高齢女性の転倒リスクの要因を総合的に比較することである。
研究デザイン:
本研究では横断的研究が使用された。
方法:
ミニメンタルステート検査(MMSE)の得点、24点以下の地域在住女性(N=158)が本研究に参加した。モントリオール認知評価試験(MoCA)によってそれぞれの参加者がMCIを有しているか否かの群分けに使用された。各参加者の転倒リスクプロフィールはPhysiological Profile Assessment(PPA)によって評価された。
3つの主要な実行機能が評価された:(1)シフト(セットの切り替え)はトレイルメイキングテスト(TMT – part B)、(2)更新(例、ワーキングメモリ)は口頭のデジットテストの逆順、(3)抑制の反応はストループカラーワードテストで評価された。
結果:
合計したPPAスコアとその構成要素である重心動揺パフォーマンスの両方で2群間の有意差をみとめた;MCIでない高齢者と比較すると、MCIを有した参加者は合計PPAスコアが高く、また大きい重心動揺であった。MCIでない参加者と比較すると、MCIを有した参加者のパフォーマンスは3つすべての主要な実行機能テストが有意に悪かった。
研究限界:
スクリーニングツールを用いてMCIを有する参加者を分類し、さらに、転倒要素は実際の発生率でないもので比較したことである。
結論:
MCIを有した高齢者での転倒リスクのスクリーニングは慎重に行うべきである。
用語の補足
【 Physiological Profile Assessment 】
姿勢の不安定性と転倒の原因を調べるための評価であり、5つの検査からなる。
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視覚機能(コントラスト感度)
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下肢の固有感覚
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下肢筋力
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反応時間
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身体動揺
参考URL: http://www.slips-online.co.uk/forms/ppa.aspx
【 実行機能 】
実行機能はMiyakeとFriedmanのモデルより、情報の更新(updating)、課題ルールのシフト(shifting)、抑制(inhibition)の3つの要素から構成されるとしている。
参考URL:https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%AE%9F%E8%A1%8C%E6%A9%9F%E8%83%BD