邦題:地域在住女性高齢者の日常生活動作における身体機能的転倒予測因子
Journal: Geriatrics & Gerontology International 2011; 11: 348-357.
Authors: Maki Aoyama, Yusuke Suzuki, Joji Onishi and Masafumi Kuzuya
【はじめに】
75歳以上の高齢者の8-17%は一年間に複数回転倒している。転倒は、「転倒後症候群」といわれる社会的引きこもりをも惹起し、寝たきりの原因となる。高齢者の転倒は生命やADL、QOLに重大な影響をおよぼす因子の一つである。女性は男性に比べて筋力が弱く、身体組成も異なり、骨粗鬆症を基にした骨折の既往など、男性よりも転倒リスクが高い。そこで高齢女性の転倒を予防し、筋力と日常生活動作、バランス、転倒との関連を明らかにするため6ヶ月の追跡調査期間中、実際に発生した転倒とそれに関連した身体機能的因子を検討した。
【対象および方法】
65歳以上の女性高齢者58名(平均年齢80.5±5.7歳)。FRI、既往歴、投薬数、老年症候群の有無、ADL、歩行、バランス機能、筋力を評価。ADL評価にはFIMと BIを実施。歩行・バランス・運動機能評価にはTUG、FR、BBS、MFSを用い、重心動揺も計測。HHDで股関節屈曲、膝関節伸展、足関節底背屈の筋力を測定し、握力も測定した。過去一年間の転倒歴の有無を調査後、6ヶ月の追跡調査期間中の転倒を記録してもらった。
【結果】
単変量解析の結果、FES、前後方向の動揺平均中心偏位、BBSと握力の転倒への関連性が示された。非転倒群ではcognitive FIMと股関節屈曲筋力、膝関節伸展筋力に、転倒群ではcognitive FIMと足関節底背屈筋力との間に有意な相関を認めた。年齢、股関節屈曲筋力、膝関節伸展筋力、足関節底背屈筋力、FR、TUG、motor FIM、cognitive FIM、BIとMFSの下位項目を二項ロジスティック回帰分析に投入後、ロジスティックステップワイズ回帰分析の結果、「階段昇降の可否」が転倒を予測する因子として抽出された。
【結論】
標準的なADLである「階段昇降の可否」が、女性高齢者の転倒リスク評価に有効であることが示唆された。「階段昇降の可否」は女性高齢者の転倒予測因子となり、転倒リスクが高い高齢者のスクリーニング検査としても有用であると考える。階段昇降に要する筋力やバランス訓練を転倒予防のリハビリテーションプログラムに加えることを推奨する。